吹き出しの中には重い言葉が並ぶ。「生きていても価値がない」「首をつる場所を探しています」……チャットで相談に応じるのは「SNSカウンセラー」と呼ばれるプロたちだ。顔が見えず、声も聞こえない――そんな相手と文字だけで向き合っている。
金沢市郊外の一軒家の一室。市の委託を受けて2021年に開設した「女性相談@金沢市」では、カウンセラーがLINEを窓口に相談を待つ。その一人、森辰美さんは以前、緊迫する場面に遭遇した。
「死にたい」
人間関係に悩む若い女性からのメッセージだった。
「死にたいくらい、辛(つら)い気持ちを抱えているんですね」
あえて質問はしない。相手は理由を語れないほど追い詰められているからだ。
「ごめんなさい」
「謝らなくてもいいよ」
「もう無理」
「限界を感じてここに来てくれたんだね。ありがとう」
会話はほとんど一言だ。詰問されているととられないよう、極力「?」は使わない。
「雨にあたってないですか」
「ちょっと濡(ぬ)れた」
「どんな場所にいるの」
「楽になれる場所」
「楽になれるって」
「高いところ」
女性の言葉に相談室の緊張感が高まる。
「走らないといけないかも」。森さんはカウンセラーが現場に駆けつける準備を進める。
「傘を持って迎えに行きたい…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル